1英語が速く聞こえるのはなぜ?
ネイティブの英語を聞いて「知っている単語なのに追いつけない」と感じたことはありませんか。耳が悪いわけでも、単語力が足りないわけでもありません。原因は、日本語と英語で「リズムの刻み方」がちがうことにあります。
日本語は「かな1つ」ずつ同じ長さ
日本語では、かな1文字ぶんの音(「拍(はく)」とよびます)が、だいたい同じ長さで並びます。「ねこがねずみをおう」なら、ね・こ・が・ね・ず・み・を・お・う の9拍。どの音も同じ重さで、1つずつはっきり発音します。
英語は「強い音」だけが同じ間隔
英語はちがいます。文の中には強く読む音と弱く読む音があり、手拍子のように等間隔に並ぶのは強い音だけです。弱い音は、次の強い音に間に合うように、強い音と強い音のすき間へ短く・軽く押しこまれます。
下の図では、太い赤の文字が強い音、小さい灰色の文字が弱い音です。縦の線が手拍子のタイミング(拍)。左はしの薄い色の列は「すき間」で、最初の強い音より前にある弱い音はここに入ります。
このように強い音を軸にリズムを刻む性質を強勢拍(きょうせいはく)リズムといいます。「強勢」は「強く読むこと」という意味です。
単語が増えても、かかる時間は同じ
この性質のおもしろいところは、強い音の数が同じなら、単語がいくつ増えても、文を言う時間がほとんど変わらないことです。下の4つの文は、どれも強い音が cats・chase・mice の3つ。単語の数は3つから8つまで増えますが、手拍子3回で言い終わります。増えた the や will や have been は、すき間に押しこまれるだけです。
※ 音は手拍子と目印だけです。実際の発音を聞くには、③ワークの「🔊 お手本」を使ってください。
英語が速く聞こえるのは、押しこまれた弱い音まで全部聞き取ろうとするからです。ネイティブ自身、弱い音ははっきり言っていません。強い音だけを手拍子のように追いかければ、英語はゆったりしたリズムで聞こえてきます。そして、自分でそのリズムで唱えられるようになると、耳もそのリズムで聞けるようになります。
※ 実際の会話では、強い音の間隔はぴったり同じではなく「だいたい同じ」です。それでも、日本語のように全部の音を同じ長さで並べるのとは、まったくちがうリズムになります。
2強く読む語・弱く読む語
どの語を強く読むかには、だいたいの決まりがあります。ひとことで言うと、「意味の中身」を運ぶ語は強く、「文の組み立て」を手伝う語は弱く読みます。
| 強く読む語(内容語) | 弱く読む語(機能語) |
|---|---|
|
名詞(もの・人の名前)cat, Tom, school 動詞(動きを表す語)eat, go, think 形容詞(ようすを表す語)new, small, good 副詞(どのように・いつ)fast, never, today 疑問詞 what, where, how 否定 not, don't, can't |
冠詞 a, an, the 前置詞(場所・方向など)to, for, of, at, in 代名詞(名前の代わり)I, you, it, them 助動詞 can, will, have, would be動詞 is, are, was 接続詞(つなぎの語)and, but, if |
※ 弱く読む語でも、文の最後に来たときや、とくに強調したいとき(「I はやったけど、あなたは?」のような比べる場面)には強く読みます。
長い単語は、その中の1か所だけが強い
英語の単語は「音節(おんせつ)」という音のかたまりでできています。音節とは、母音(ア・イ・ウ・エ・オのような音)を中心にしたひとかたまりのことです。たとえば dinner は din・ner の2音節、banana は ba・na・na の3音節です。
2音節以上の単語では、強く読むのはそのうち1つだけです。DINner、toNIGHT、baNAna のように、残りの音節は弱い音としてすき間に入ります。手拍子を打つのは強い音節の上です。
弱い音は、形まで変わる
すき間に押しこむために、弱い音は短くなるだけでなく、音そのものが変わります。いちばん多いのは、母音が口の力を抜いた「ア」と「ウ」の中間のあいまいな音になることです。この音は記号で ə(シュワ)と書きます。
| 語 | ていねいに言うと | 弱く言うと |
|---|---|---|
| the | ズィー | /ðə/ 短い「ダ」に近い |
| a | エイ | /ə/ 軽い「ア」 |
| to | トゥー | /tə/ 「タ」に近い |
| for | フォー | /fər/ 「ファ」 |
| of | オブ | /əv/ 「ァヴ」、子音の前では「ア」だけ |
| and | アンド | /ən/ 「ン」だけになることも |
| can | キャン | /kən/ 「クン」 |
| have | ハヴ | /əv/ 「ァヴ」(h が消える) |
| you | ユー | /jə/ 「ヤ」 |
| going to | ゴーイング・トゥー | gonna 「ガナ」 |
| want to | ウォント・トゥー | wanna 「ワナ」 |
たとえば is going to(is・go・ing・to の4音節)は、すき間に入りきらないとき「ズナ」くらいの1かたまりまで縮みます。聞き取れなかったのは、この縮んだ音を「ゴーイング・トゥー」と探していたからです。
やってみよう:強い語はどれ?
強く読むと思う語をタップして選び、「答え合わせ」を押してください。
3ワーク:手拍子に合わせて唱える
いよいよ練習です。「▶ リズムで練習」を押すと、カウント(コッ・コッ・コッ)のあとに手拍子が鳴ります。手拍子と同時に赤い強い音を言い、灰色の弱い音はすき間に軽く押しこんでください。1回言うごとに、息つぎ用の「すき間」の拍が1つ入ります。
- 最初は「🔊 お手本」で発音を確かめる。
- 遅めのテンポで、強い音を手拍子にぴったり合わせることだけに集中する。
- 弱い音ははっきり言わなくていい。間に合わなければ、つぶして短くする。
- 続けて言えたら、テンポを上げるか「だんだん速く」で限界に挑戦。
- 「録音する」で自分の声を聞き直すと、ずれがよくわかる。
※ iPhone はマナーモード(消音)だと音が出ません。
4聞き取りに使う
唱える練習でリズムが体に入ったら、聞くときにも使えます。全部の単語を拾おうとせず、強い音(手拍子の位置)の単語だけを拾ってみましょう。強い語だけで、文の意味はほとんどわかります。
「▶ 聞く」を押すと、ランダムな文が読み上げられます。□ の数が強い音の数です。聞こえた強い語を思い浮かべてから、答えを開いてください。